日本が鎖国政策をとっていた時代、唯一西洋に開かれていた長崎。貿易の窓口として、さまざまな異文化がもたらされた。諸説あるが、「長崎ビードロ」もそのひとつ。ポルトガルから渡ってきたガラス工芸が、長崎のガラス製品「長崎ビードロ」のはじまりと言われている。ビードロとは吹きガラスのことで、熱く溶かしたガラスをパイプ管に巻き付け、息を吹き込みながら成形していく技法。長崎で盛んにつくられ、その後、江戸や大阪に伝わっていった。今回はこの伝統的な技法「吹きガラス」を、長崎の地で守り続けている瑠璃庵に足を運んだ。
長崎県 瑠璃庵様 | 2016.8.26
長崎県長崎市で吹きガラス、ステンドグラスを制作している、瑠璃庵を訪ねて。
訪れた先は長崎県長崎市、現存する日本最古のキリスト教建築物「大浦天主堂」の近くにあるガラス工房、『瑠璃庵』。代表の竹田克人(かつと)氏をはじめスタッフは皆、吹きガラスの中でも宙吹き(ちゅうぶき)ガラスの製法を今でも忠実に守っている。吹きガラスには、宙吹きと型吹きの2種類があり、宙吹きは一切型を使用せず、空中で息を吹き込んで自由な形に成形する技法だ。熱で軟らかくなっているガラスは重力によって変形してしまうので、常に吹き棹を回転させなければいけない。難しさはあるが、その反面自由度が高いため芸術性の高い作品に仕上げることができるという特徴がある。瑠璃庵が、お客様に選ばれる理由はどこにあるか聞いてみると、2代目である息子の礼人(あやと)氏は「ガラスの透明度とさまざまなオーダーメイドに対応できる技術力の高さですかね」と少し謙遜気味に答える。ショーケースに並んだ精緻な製品をざっと眺めただけで、その言葉が真実であることが一目で分かった。