昭和時代、観光地で販売されているお土産の定番のひとつはキーホルダーだった。都道府県の地図が形になったものや漢字の地名がそのままキーホルダーになったもの、他にも家紋柄、小判、そして金閣寺や富士山などの観光名所がデザインされたものまで実に多種多彩。金属製なので重厚さも感じられるキーホルダーは、コレクターでなくとも所有欲をかき立てられるものだった。30代以上の人ならば、現在主流のものよりもサイズが大きめで、重みもあるキーホルダーを修学旅行や旅先で一度は購入したことがあるだろう。今回は、このキーホルダーをつくり続けている桂記章に足を運んだ。
石川県 桂記章様 | 2017.4.29
石川県金沢市でキーホルダーをつくっている桂記章を訪ねて。
向かった先は、石川県金沢市にある「桂記章」。昭和23年に創業し、まもなく70周年を迎える老舗企業だ。同社が手がけるキーホルダーは、国内製造シェア1位を長年保持している。壁一面には見たことがあるキーホルダーがずらり。昭和生まれならば、懐かしさが一気にこみ上げてくるものばかりだ。これらは全て同社が手がけたキーホルダーだ。このようなレトロチックな製品は今ではどれほどのニーズがあるのか、同社代表の澤田幸宏氏に伺うと「以前と比べニーズが少なくなったのは事実。海外にシェアを奪われるなどの要因も重なり、売上は全盛期に比べ減少しています」。同業者の多くが撤退を余儀なくされる中、同社はこの苦境を打破するために、記章業界では珍しい企画・デザインから製造までの全工程を一貫して行う生産体制を構築。その強みを活かし、時代のニーズに対応したコンパクトで軽量なキーホルダーや自社企画のオリジナル製品を続々と開発し、首位の座を死守している。「危機感を感じると、燃えるんですよ」と笑う澤田氏、従業員ならずとも頼りたくなる人物だ。