第11回 石川県 桂記章様

国産品としてのプライドを持って製品づくりに挑む。

社名に記章とあるように桂記章の取扱製品は、キーホルダーに限らずバッジや社章、校章、胸章など幅広い。しかしこれらの製品も、生産拠点を海外にシフトしている企業が多いのが実情だ。「コストはもちろんですが、納品までのスピードも、製品によってはクオリティも海外と比べて私たちの方が劣っていると思っています」と、澤田氏は真剣に語る。では、どうやって立ち向かおうとしているのか。「例えば社章は会社の顔。だからこそ、国産にこだわる企業様は数多くいらっしゃいます。その期待以上に応えることが私たちの使命です。胸を張ってメイドインジャパンです!と言えるようなクオリティに仕上げていきたい。しかし、まだまだそのレベルには達していないと思っています」。価格競争に巻き込まれず、さらなる品質の向上を目指す。製造業本来の姿勢をつらぬくことが、困難を跳ね返す原動力となっているのだろう。

頭の中は常に、新しいアイデアで満たされている。

桂記章はこれまでに、携帯ストラップや近年各地で開催されているマラソン大会のトロフィ、メダル、博覧会の記念グッズなど、時代のニーズから生まれた製品を数多く手がけている。これらに共通しているのは、受注する以前から企画をあたためていたことだ。「アイデアは、頭の中にいっぱいあって、常にアイドリングしている状態。提案するなら今だ!と思ったら直ぐに提案しに行きます。流行が終わってから新しい企画を考えているようでは遅いんですよ」。澤田氏は子どもの頃に入っていたボーイスカウトで、指示を待たずに自分で考えて行動する重要性を体感。その経験が大人になった今でも仕事に活かされているという。「私だけでなく従業員にも、新しい企画を常に考えるように伝えています。業界や製品市場を限定していないので、考えることは楽しいと思いますよ」。その言葉通り澤田氏は、本物そっくりの美しい慶長小判、二十五束と高級袱紗(ふくさ)をセットにした「悪代官セット」や、慶長小判だけでなく千両箱までつくった「金箔千両小判」を企画製作。同製品は平成23年度の石川ブランド認定品に選定されるという名誉に輝いている。「こういうのを考えるのが本当に好きでね」と、屈託のない笑顔を見せてくれた。

大好きな金沢の良さを、さらにもっと広めていきたい。

澤田氏が営業として桂記章の製品を持って全国を飛び回っていた頃、あることに気づく。それは、自分が金沢のことを全く知らないということだ。「行く先々で金沢は良い所ですねと言われるんです。でも地元だから気にしたことがなくて会話が続かない。お客さんが金沢に来ても、兼六園や武家屋敷通りぐらいしか連れて行く場所がなくてね。それからです、金沢の勉強を始めたのは」。理解を深めていくと名所だけでなく、歴史、偉人、伝統工芸、美味しい食事など良いものがたくさんあることに改めて気づき、金沢の良さを再認識。それを自社で伝えることができないかと考え始めたという。「石川県の観光PRキャラクター“ひゃくまんさん”とコラボしたグッズや、加賀手まりをモチーフにした飾りゴムはその一例です。これらは女性社員が中心となって企画製作しています」。金沢では娘が嫁ぐ時に、幸せを願って加賀手まりを持たせるという習慣があり、そうした地域の風習を活かし製品化。同製品は「おみやげグランプリ2017 奨励賞」を受賞している。「金沢のイメージが良いのは先人達のおかげです。先人達に感謝しながら、私たちも金沢のイメージと知名度を向上させていきたいですね」。今まで通り現状に満足すること無く、製品の品質追求や新たな企画開発を続けていく限り、その思いは必ず実現するだろう。