第25回 愛知県 横山興業株式会社様

ものづくりで、カクテルの味が変わった。ものづくりで、カクテルの味が変わった。

ウイスキーやブランデー、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラなどをベースに、リキュールやシロップ・果汁・香料などを配合し、氷を加えた飲み物「カクテル」。その種類はとても多く、知られている名前だけでも3000種を超えると言われている。カクテルをつくる際にメインとなるツールが、カクテルシェーカー。映画やドラマで、バーテンダーが銀の容器を持ってシェークする姿を一度は目にしたことがあるだろう。これは、カクテルによっては混ざりにくい材料同士があるのを、よく振ることでしっかりと馴染ませるためだ。今回は、このカクテルづくりの必需品であるシェーカーを開発・製造し、カクテルツールブランド「BIRDY.」(現在のブランド名は「BIRDY. by Erik Lorincz」、以下バーディ)を立ち上げた、愛知県豊田市の横山興業を訪ねた。

愛知県 横山興業様 | 2019.6.4

愛知県豊田市でカクテルシェーカーを開発した、横山興業を訪ねて。

今回訪れたのは、愛知県豊田市にある「横山興業」。同社は60年以上にわたり自動車部品の製造を手がける老舗メーカーだ。自動車部品メーカーが、なぜカクテルシェーカーをつくっているのか?誰もが真っ先に思うこの疑問を、開発者である横山哲也氏から詳しく話を伺った。「会社は兄が継いでいましたので、私は大学卒業後、Webの制作会社に就職。横山興業が初の海外進出となるタイ工場を設立する際に入社しました。家族の力になりたいという思いと同時に、タイに行けるかもという気持ちも多少ありましたね(笑)」。月の半分以上をタイで生活するようになった横山氏だったが、次第にある気持ちが募っていった。同社がこれまで培ってきた技術力には絶対的な自信があったが、現地のスタッフは熱意もあるので技術の習得スピードがとても早い。世間で言われている“日本のものづくりのコモディティ化”に近い将来、直面すると思ったと言う。「これからの50年、100年に向けて残る企業となるためには、日本企業としてニッチな世界でも付加価値の高い、独自性のある新事業の必要性を感じたんです」。そこから、社会の変化に巻き込まれない圧倒的な強い軸を探すことが始まった。