第33回 千葉県 河野製作所様

医療のニーズと工学のシーズを結びつける。

河野製作所が考える医工連携とは、医療分野のニーズと工学分野のシーズを結びつけることで、医療現場の課題を解決する新製品を開発すること。同社はその間に立ち、医師と技術者の通訳を果たす。「医学と工学では、話す言葉が違うので、直接話すとまとまらないことがあるんです。弊社には工学系出身で実際にものづくりができるスタッフが数多くいます。その人間が間に入って主導権を握りコントロールすることで、医工連携が上手くいっています」と河野氏は自信を持って語る。
同社で開発された世界初の縫合針「Octacus」は、まさに医師からのニーズを起点として誕生した製品だ。通常の縫合針は、把持部の断面形状が円形または四角形が一般的。四角形はしっかり把持できるが、針を持つ持針器に対して垂直か平行でしか把持できない。円形ならば自由な角度で把持できるが、滑りやすく把持力が下がってしまう。それぞれ特性が異なり把持力の安定性と操作性の両立を実現させることが難しかった。そのような医師からの声を聞き、当時入社2年目の串畑氏が開発に着手した。

世の中にないものは製作ノウハウがなく、製品化までに時間がかかった。

「自由な角度で持てて、しっかりと把持力のあるものなら、手術がしやすいと言う声をドクターから聞いたんです。それなら四角形と円形の中間、八角形がいいのではと思い開発に着手しました」と、串畑氏はきっかけを話してくれた。八角形の縫合針をつくるには、同様の八角形断面形状を有する高強度のステンレスワイヤが必要となる。しかし、世の中にはまだ製作手法が確立されていないため、困難を極めたという。社内では完結できなかったので、まずは協力企業を探し出し依頼することから始まった。「ワイヤーを針の形にするのが技術的に難しく、何回挑戦してもキレイで強い八角形にはならなかったんです。途中で協力会社も諦めかけていました。でも、世の中にないものだから、出来たら面白い!と言うことを何度も話し説得しました」。ワイヤーの形になるまで3年、製品として完成するまでにトータルで約5年かかってしまったが、世界初の八角縫合針を開発することに成功した。「精度と強度を高レベルで両立するという無理難題を解決できたのは、ひたむきに付き合ってくれた協力会社のおかげです」と、串畑氏は今でも感謝している。

医師と共に製品のクオリティを更新し続けていく。

同社のモットーは医療の発展に貢献し続けること。開発製品を発売して終わりではなく、実際に使用している医師からアドバイスをもらい、クオリティを更新し続けている。串畑氏がアドバイスを求めた心臓血管外科医の田畑医師は、「Octacus」開発についてこう話す。
「最初の段階では、八角から丸になる段差が滑らかではなく、軽い突っかかりが気になると伝え、改善してもらいました。針糸の操作性は手術をスムーズに進めるために重要で、手術が長引けばそれだけ患者への負担が大きくなる。そういった意味では、工業なくして医療は成り立たないとも言えます。」
「ものっていうと語弊がありますけど、私たちの手術はものづくりの感覚がちょっとあるんですね。手術をすることで、キレイに部品を直し(機能を取り戻す)、身体を良い状態にするという意味で。だからこそ、使いやすい道具をつくっていただく河野さんの存在はありがたいですね。」
代表の河野氏に会社の将来像を伺うと「例え小さい世界でも、ドクターのニーズがあるならば、その世界でオンリー1、No.1を目指したい。まずは100個の製品を世界No.1にできればと考えています」と意気込む。同社の強みは「出来ない」と言わず、何でもつくり、何でもやること。自動機などの社内の設備も自分たちでつくるほどだ。何でもつくるというチャレンジ精神のある人材、製造装置までつくれる組織、医療業界に貢献するという思い。河野製作所ならば、どんな目標も、将来必ず実現してくれそうだ。