古来より日本で使われてきた伝統的な和楽器、三味線。長唄、小唄、箏曲、義太夫、地歌、浪曲、民謡、津軽…、ざっとあげても三味線の種類は実に多い。もともとは14世紀に中国から「三弦」という楽器が当時の琉球(沖縄)に伝えられ、その後室町時代末に日本へ。江戸時代には、自分で歌って楽しむ音楽として、一般の人たちに愛好されるようになった。現在、国内の三味線人口はおよそ70万。これは、全盛期の約50分の1という数字だ。日本の伝統でもあり庶民の楽器でもあった三味線を、もう一度日本で、さらには海外へも広めていきたい。そう熱い思いで三味線作りに取組む、職人のもとへ足を運んだ。
東京都 東京三味線 三弦司きくおか | 2015.08.03
東京で職人として三味線をつくり続ける、三弦司きくおかを訪ねた。
訪ねた三味線工房は、東京都葛飾区にある「三絃司きくおか」。代表の河野公昭氏は、大学を卒業後、浅草の三味線職人に弟子入りし、修行を積む。その後26歳で独立、現在の地で開業した。河野氏が三味線に興味を持ったのは、「音」だった。河野氏の母の趣味は三味線。子供の頃からその音色には馴染みがあったが、ある時三味線は皮の張り方で音が変わることに気づく。同じ演者、同じ三味線でも皮の張り方が違うだけで、全く違う音になることに驚いたそうだ。「皮張りの技術という、人間がつくる結果で音が変わるのは楽しいと思いましたね 。」それはさらなる興味を覚えた瞬間でもあった。