第3回 栃木県宇都宮市 クロサキ工芸様

親子3人の探究心が寄添う時、強固な向上心が生まれる。親子3人の探究心が寄添う時、強固な向上心が生まれる。

家具や建具、調度品の中でも、釘などの接合道具や接着剤などの接合材料を使わずに、木と木のみを組み合わせてつくられたものを称する指物。この独特の技法そのものも指物と呼ばれ、江戸時代には木工品の専門職人として指物師も誕生するなど隆盛を極めた。京指物や大阪唐木指物など、地域ごとにいくつか流派があるが、中でも江戸指物は木目に漆塗りを施し、素材本来の美しさを活かす特徴がある。現在、指物師の人口は減少傾向にあるが、この江戸指物の技術、木目の美しさにこだわり、家具づくりを行っている伝統工芸士のもとを訪れた。

宇都宮市 クロサキ工芸 | 2015.10.05

栃木県宇都宮市で、指物づくりの道を極め続ける、伝統工芸士を訪ねて

 訪れた先は、栃木県宇都宮市にある「クロサキ工芸」。代表を務める黒崎啓弘氏は、同工房の2代目。啓弘氏の父である先代が東京で覚えた指物を主としながら、日本の伝統的な和家具から、洋家具・建具など、さまざまな木製品を手がけている。現在は伝統工芸士として認定を受け活躍している黒崎氏だが、実は駆け出しの頃、若さ故の父への反抗からこの仕事があまり好きではなかったという。だが、あるきっかけにより指物への考え方、思いが一変する。それは、木工家「黒田辰秋」氏の作品との出会い。作家や映画監督など多くの文化人に愛用された黒田氏の作品だが、黒崎氏も同様に一瞬で魅了された。美しさ、完成度に感動した黒崎氏は、改めて木工品づくりへの道を邁進する決意をした。