第12回 神奈川県 横田宗隆オルガン製作研究所様

一生を捧げるほど、好きなことに魅了される職人がいる一生を捧げるほど、好きなことに魅了される職人がいる

教会やコンサートホールなどにあるパイプオルガン。その存在感と音響のスケールは圧倒的だ。そしてたった1台でオーケストラにも匹敵するさまざまな音色を奏でることから「楽器の王様」とも称されている。同楽器はパイプに風を送って中の空気を振動させて音を鳴らすのだが、実はパイプは1本でひとつの音しか出せない。そのため、出せる音色を増やすには本数を増やす必要があり、何百本、何千本、中には1万本以上のパイプを使用しているものまであるという。今回は芸術的要素を集結する楽器「パイプオルガン」に一生を注ぐほど魅了された人物に会いに行った。

神奈川県 横田宗隆オルガン製作研究所様 | 2017.5.24

神奈川県相模原市でパイプオルガンをつくる、横田宗隆オルガン製作研究所を訪ねて。

訪れた先は、神奈川県相模原市にある「横田宗隆オルガン製作研究所」。代表の横田氏が、2015年に建てた工房だ。日本ではあまり聞き慣れない、パイプオルガン建造家という職業をなぜ選んだのか。その理由を伺うと14歳のクリスマスに聴いた1枚のLPレコードがきっかけだという。「欲しかったレコードは売切れで、その替わりに偶然に手にしたのがパイプオルガンで演奏されたものでした。それを聴いて以来、荘厳で美しい音色に魅了されましたね」。音楽に心を奪われることは、そのジャンルに関係なく誰しもあることだが、そこから楽器製作への道を選ぶ人はそう多くない。音楽は聴くだけで充分に満たされるからだ。しかし、「レコードに封入されている解説書に、“このような楽器があったからこそ、バッハも良い曲がつくれた”と書いてあったんです。その時初めて、楽器そのものに重要な意味があることを知りました」と横田はいう。曲を演奏する道具として捉えていた楽器が、実は作曲家、演奏者に強い影響を与えることがある。解説書の言葉を、中学生でそこまで解釈できる感性には感服せざるを得ない。