家具生産の一大拠点として480年もの歴史を持つ、福岡県大川市。もともと同地は、筑後川上流の木材の産地・日田より川を下ってくる材木の集積地で、造船業が盛んだった。大川家具の開祖、榎津久米之介が船大工の技術を生かして始めた榎津指物が、大川家具の起こりと言われている。その後江戸時代に入り、本格的に家具の製造を開始。昭和30年代には、工業デザイナーの河内諒氏が引手なしのタンスをデザインし、大阪で開かれた西日本物産展にて最高賞を受賞するという快挙を成し遂げた。このことにより「家具の町大川」として全国的に認知が拡大。あらゆる木製家具を生産する家具産地として成長し、常に日本トップクラスの生産量を誇るようになる。今回はこの大川市で、「木」と「手づくり」にこだわった創作家具を手がけている「家具工房 西田」を訪ねた。
福岡県 家具工房西田様 | 2019.3.6
福岡県大川市で創作家具を手がける、家具工房 西田を訪ねて。
今回訪れたのは、福岡県大川市にある「家具工房 西田」。代表の西田政義氏の出身地は佐賀県だが、中学を卒業後に大川市の家具工房に弟子入りをした。「親戚の人たちから、大川で修業をしてみてはどうかと勧められたのがきっかけです」。西田氏の父親は大工だった。家にはさまざまな工具があったため、西郷隆盛や加藤清正などの彫刻を趣味でつくっていたそうだ。それら作品のレベルを見て、この子なら出来るだろうと思った親戚のおじさん達が声をかけたという。現存しているその頃の作品を見せてもらったが、確かにとても中学生がつくったとは思えないレベルのものだった。しかし、そこで疑問が湧く。彫刻作品と家具は全く違う。彫刻は芸術作品だが、家具は日常で使用する商品。そこに抵抗はなかったのかを尋ねると「父は10歳で亡くなってしまったので母子家庭。父が他界後、母には再婚の話がありましたけど、“子供が大きくなるのが楽しみだから”と言って、全て断っていたんです。私は兄弟4人の長男だったので、そんな母を助けたいという強い思いがありました。その頃の大川は弟子入りをすれば食いっぱぐれがないという時代だったので、迷わず家具職人の道を選んだんです」。