木彫の一技法である「一刀彫」。一刀彫の名前の由来には諸説あり、一刀一刀心を込めて彫るところから名付けられたという説もあれば、あたかも一太刀で彫りあげたような印象から生まれたとも言われている。その一刀彫の中でも、代表的なものが奈良一刀彫。能楽、舞楽、鹿、十二支、ひな人形などを題材とした木彫に、金箔や岩絵具などで極彩色に施されている。他にも有名なものが、国指定伝統的工芸品でもある飛騨一位一刀彫。こちらは、色彩を一切施さず、木目の美しさを生かしているのが特徴だ。今回は兵庫県神戸市で、奈良や飛騨とも違うオリジナルの作品づくりを行っている、一刀彫アーティスト室井昇氏を訪ねた。
兵庫県 室井昇様 | 2020.2.12
兵庫県神戸市に工房を構える一刀彫アーティスト 室井昇氏を訪ねて。
今回訪れたのは、一刀彫アーティスト 室井昇氏の工房がある兵庫県神戸市。実は室井氏の本職は、機械加工を専門とする東洋精機株式会社の代表取締役だ。室井氏は美術大学を卒業後、乃村工藝社に入社。大手企業の展示館をはじめ、ショールーム、展示会など様々な空間づくりを手がけてきた。「元々は工業デザインをやりたかったんです。でも、それだと一部しか担当できないと思ったので、空間の方に進みました」。室井氏は車が好きなので、進路先に自動車メーカーを考えたそうだ。しかし車の場合、エクステリア、インテリアなど、分野ごとに担当デザイナーは違う。室井氏は、あくまでも全体を担当できるかどうかにこだわったという。「空間の場合、全体の構成ができるんです。やはりものづくりは、全部ができないと楽しくないんですよ」。