企業やメーカーには属さず、個人のアトリエや工房で時計製作を行っている独立時計師。他に類を見ないアイデア、難易度の高い技術力で機械式時計を製作する職人である。メーカーの方針やマーケティングが優先されることがないため、自分自身がつくりたいと思う時計を納得がいくまで時間をかけてつくることができる。機械式時計のムーブメントからネジ針、ケース、文字盤といった全てを自分の手で手がける職人もおり、1本にかける製作時間は半年から1年になる場合もある。今回は、自身のブランド『DAIZOH MAKIHARA WATCHCRAFT JAPAN』を手がける独立時計師 牧原大造氏を訪ねた。
埼玉県 牧原大造様 | 2023.7.3
埼玉県某所で機械式時計の製作を行う、独立時計師牧原大造氏を訪ねて。
今回訪れたのは埼玉県某所で、機械式時計を製作している牧原大造氏。独立時計師である。実は牧原氏は、最初から時計師の道に進んだわけではなかった。高校卒業後の進路を選ぶ際、料理人か時計師になるかの二択で迷い、料理人の世界を選択した。当時はまだインターネットは普及しておらず、牧原氏は時計について学べる学校があることを知らなかったため、料理人を選んだのは消去法だったという。
初めての給料で購入したのは、機械式時計。オメガのスピードマスターだった。同時計は裏蓋がスケルトンのため、ムーブメントが見える。牧原氏は、改めて時計を分解して修理をしたいという思いに駆られたが、仕事にするという考えは心にしまったまま、料理人として邁進する日々を過ごした。そんな牧原氏に転機が訪れたのは、就職して8年が経った頃。ヒコ・みづのジュエリーカレッジに通っている友人から、同校に時計のコースがあることを教えてもらった時だった。「27歳の時に初めて、時計の学校を知ることになりました。まだ時計への気持ちが残っていたので、料理人を辞め入学することを決意したんです」。牧原氏は決断した当時の思いをそう語る。